摩利支天

摩利支天(まりしてん, : Mārīcī[1]、マーリーチー[1][2]、訳:陽炎、威光[3])は、仏教の守護神である天部の一尊。梵天の子、または日天の妃ともいわれる[3]。摩里支菩薩、威光菩薩とも呼ばれる[2]

摩利支天(マーリーチー)は陽炎、太陽の光、の光を意味する「マリーチ」(Marīci)を神格化したもの[1]で、由来は古代インドの『リグ・ヴェーダ』に登場するウシャスという暁の女神であると考えられている[4]。陽炎は実体がないので捉えられず、焼けず、濡らせず、傷付かない。隠形の身で、常に日天の前に疾行し、自在の神通力を有すとされる。これらの特性から、日本では武士の間に摩利支天信仰があった。また、斗母元君は摩利支天を中国道教に引き入れた神で、西王母と比肩する高位の女神である。

像容

元来二臂の女神像であるが、男神像としても造られるようになった。三面六臂または三面八臂で月と猪に乗る姿などもある。

日本における信仰

護身や蓄財などの神として日本で中世以降信仰を集めた。楠木正成は、兜の中に摩利支天の小像を篭めていたという。また、毛利元就立花道雪は「摩利支天の旗」を旗印として用いた。山本勘助前田利家立花宗茂といった武将も摩利支天を信仰していたと伝えられている。禅宗日蓮宗でも護法善神として重視されている。

日本の山岳信仰の対象となった山のうちの一峰が摩利支天と呼ばれている場合があり、その実例として、木曽御嶽山(摩利支天山)、乗鞍岳(摩利支天岳)、甲斐駒ヶ岳があげられる。

タイ捨流剣術では、現在でもなお、「タイ捨流忍心術」摩利支天経を唱えてから稽古や演武に入る。[5]

真言

オン・アニチ・マリシエイ・ソワカ

または、

オン・マリシエイ・ソワカ

陀羅尼

ナモアラタンナ・タラヤヤ・タニヤタ・アキャマシ・マキャマシ・アトマシ・シハラマシ・マカシハラマシ・アタンダナマシ・マリシヤマシ・ナモソトテイ・アラキシャアラキシャタマン・サラバサトバナンシャ・サルバタラ・サルババユ・ハダラベイ・ビヤクソワカ

摩利支天の法

日本には忍者が結ぶの基になった、戦場に臨む武士が行う修法「摩利支天の法」(まりしてんのほう)が存在し、摩利支天は武士の守り本尊として鎌倉時代から武士に人気があった。方法は、右手と左手の人差し指と中指をそれぞれ立て、右手を刀、左手を鞘に見立て、右手で空中を切る。空中を切った後、刀に見立てた右手指は、鞘に見立てた左手に納める。

主な寺院

その他
  • 日通山妙善寺[6]
  • 身延山蓮盛坊摩利支天堂
  • 團學山住心院妙見堂[7]
  • 武運山長谷寺[8]
  • 日先神社(東村)[9]
  • 権現の森の摩利支天像(金沢村を参照)[10]
  • 香里妙法山静照寺[11]
  • 戸倉山の摩利支天碑
  • 佐紀神社
  • 萬年山長松禪院[12]

出典・脚注

[脚注の使い方]
  1. ^ a b c 園田 2019, p. 316.
  2. ^ a b 吉田 2019, p. 25.
  3. ^ a b 錦織亮介『天部の仏像事典』東京美術1983年、139頁。
  4. ^ 仏像ワールド
  5. ^ 【古武道タイ捨流剣術 道場八代龍泉館】入門之手引:タイ捨流と摩利支天
  6. ^ 公式
  7. ^ Shinden
  8. ^ 公式
  9. ^ 世田谷から神社とお寺とお散歩と
  10. ^ 非公式
  11. ^ 公式
  12. ^ 公式

参考文献

  • 園田 沙弥佳「『サーダナ・マーラー』におけるマーリーチーの成就法」『印度學佛教學研究』第68巻第1号、日本印度学仏教学会、2019年、361-356頁、doi:10.4259/ibk.68.1_361。 
  • 吉田 典代「摩利支天をめぐる言説と美術 : 日天との関わり」『研究年報』第65号、學習院大學文學部、2019年、25-47頁。 

関連項目

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